寒蘭の色出しについて

私のこれまで経験した現象および疑問

花の咲き方が変わる。

開花時期が遅くなっていく。

購入した赤花が更紗になる。

柄の出現が一定しない。

舌前面無点物が舌点が出て消えない。

一年一作が遠のいていく。

暗作りしている人から分けてもらった株は花が咲きにくい。

肥料を多く与えている株は復元するのに数年かかる。

今年の培養上での大発見(?)

先入観

光の採り方

私の今年の大発見

無点が帰ってきた。

桃花が桃に、紅が赤く、更紗が更紗らしく

その他の変化


  
無名青無点系 


  
憲陽


  
錦旗

平成12124

                      森江 潤二                       

はじめに

 私が寒蘭を始めて知ったのは30年程前、30才ぐらいの時で、紫檀の花台に青花5〜6輪(上2輪は蕾)を、玄関に飾られていたのを見たときでした。この世の花かと驚愕し、感動しました。

“これだ”ととっさに思いました。探していたのはこれだと思ったのです。これがこの世界に入ったきっかけでした。どこにそのような感動を受ける要素があったのか今もって解りません。今も探している現状です。今作場を2室もち、250鉢ほど培養していますが当地で20年になります。通産寒蘭暦30年程です。 兵庫県の明石と加古川の間で海岸線より 6キロメートル 海抜50メートルほどの年間雨量も少なく溜池の多い所です。 周囲は住宅街ですが500m〜1kmも外に出ると田園地帯で 山は遠く離れている平坦な地帯です。

これまでは、仕事におわれろくに記録も取っていませんが、経験よりいろんな不具合を一つでも良くしたいと思いながら、試行錯誤の連続でした。 昨年 会社を辞めてからは、まず、気温の計測から始め これまでの不具合の是正を試み、一年近く経過し ある程度の成果を得たので報告し参考に供したく筆をとった次第です。研究者でも文筆家でもありません。読みにくい点は御容赦願います。 私の寒蘭に対する考え方の根幹は、当初私の寒蘭から受けた感動を一人でも多くの人に知ってもらいたい ということでした。 今は加えて寒蘭と共に生きる そして自分の鏡であると考えています。

 

1.    私のこれまで経験した現象および疑問

 私のこれまで経験した現象を列挙してみます。皆様もいくつかあるかと思われます。

イ) 花の咲き方が変わる。
 三角から平肩に咲いていた株が抱え咲きに変わる品種があり戻らない。

ロ) 開花時期が遅くなっていく。
  11月に咲いていた花が 翌年2月まで遅くなっていくものがある。

) 購入した赤花が更紗になる。

ニ) 柄の出現が一定しない。

ホ) 舌前面無点物が舌点が出て消えない。

へ) 一年一作が遠のいていく。

ト)暗作りしている人から分けてもらった株は花が咲きにくい。

チ)肥料を多く与えている株は復元するのに数年かかる。など等

 これらの現象は品種の特性もあり、生産地との気象条件の差 あるいは自分の作場の環境・培養法など不確定要素に起因する問題と思いながらの繰り返しでした。
特に温度差は昔から言われ、色花に関してはその年の気象条件に頼るしかないと期待する。そして、地球温暖化が進む中 仕方なし と落胆する。

一方花の仕立て方に対する疑問

 現在、展示会などで寒蘭は一本仕立てで、直立し、葉上に抜け数輪を四方咲きしているものが最良とされ、皆それぞれ工夫を凝らしている。
 しかし、寒蘭を知らない人が見て 香りは別として感動するのは この仕立て方が最良なのでしょうか 確かに見た目に綺麗です。美しいです。だが感動し自分も作ってみたいと思う人が一向に増えない。いや減少傾向にあるといってよいと思う。人間の目は1/10mmの判別ができるといわれ久しい。1/100ミリメートルの判別ができるのではないかと思う。
 この視点は色出しより難解で大切なものかもしれないと思うのは私一人でしょうかここでは 長くなり、本題から外れるのでこれまでに止めておきます。

2.     今年の培養上での大発見(?)

イ)    先入観

 先述のこれらの現象に対し 先ず思い当たったのが光の採り方です。

植物全て光合成により養分を作り蓄えます。私の経験した現象はほとんどこの光に関係しているのではないかと感じられます。 私の蘭の山採りの経験  自生地の薄暗さ(一日中の光の経過を見ていない)が入力されていたのです。

一度蘭舎を作るとこれでOKと思ってしまいますし又、本にも通年50パーセント遮光のダイオネットあるいは寒冷遮を一枚張り、夏は一枚追設する と書いた物もあります。この遮光も先入観として入力され 継続されていくのです。そしてなお、屋根材として張られた半透明のガラス繊維入りの波板は老化し光の透過率は下がるばかり  暗作りの人の蘭は咲かないといいながら自分の環境のことはおざなりとなっていたように思います。

ロ) 光の採り方(年間気温記録表蘭舎配地図参照)

 サンルーム側蘭舎昨年末屋根材をポリカーボネイト(ポリカ)の半透明板に取替えました。

 (外蘭舎は一昨年ガラス繊維入り波板に取替え済み)一挙に明るくなり少し心配もありましたが1月にダイオネット遮光率50パーセントを張り、10月まで経過を見ることとしましたが 8月上旬昨年の成葉1枚に光線が直角に当たっている部分50mmほど 真白に葉焼けを起こしました。

これが光線の採り方として今の蘭に限界だったようです。葉に触ると少し熱く感じました。

斜めに光が当たっている部分は熱を感じません。

そして9月花芽が伸びだし、最高気温が30℃を切り出したころ今回は9月19日に両蘭舎ともダイオネットを取り外しました。このころは太陽も傾きそれほど強い光はありません。

但し、蘭舎には換気扇(20cm)2台設置しており、1台は外気を入れ、もう1台は排気用にサーモスタットで自動発停(30℃)するよう設定しています。これで問題なく何日かは換気扇が回っていました。最高気温も35℃がMAXでした。9月下旬は最高でも30℃をきるようになり10月はじめから温度差を取る為 昼 窓・入り口ドアーを締め、 夜 開放に入りました。

基礎部の通気孔は開けたままです。これで天気がよければ15度前後の温度差が取れることがわかりました。私の所は隣家との関係で配置図に記載しておりますように両蘭舎とも数時間しか太陽が当たりません。(9月以降) 一日中陽が当たるところは温度が上がりますので注意が必要です。 これまで 5〜6年間朝陽が当たるサンルームで温度差を取る為開閉をしてきましたが逆だったわけです。ましてダイオネットは外していませんでした。したがって温度差も取れず色出しに失敗していました。 朝日が当たるサンルームのほうが昼間温度が上がるだろうとの思い込みがありました。やはり計測し記録をつけることは大切な事です。これも発見の一つです。

年間温度記録にありますように10月は外蘭舎で10℃以上温度差が取れた日が22日、温度差平均12.3度取れたわけです。サンルーム側は温度差を十分取れませんでした。

色出しようの蘭はほとんどサンルーム側に入れていたので急遽 外に移しましたが今年は遅かったようです。

3.私の今年の大発見

イ)    無点が帰ってきた。

舌前面無点物で点が出て消えなかった青花が無点に近く咲きました。

まだ完全ではありませんが やっと帰ってきたのです。これは驚きでした。

予想していなかったことです。舌点の紅もアントシアンですが光をあてて消える。

アントシアンには光が少なくても発色するものと、光を得て発色するもの等2〜3

種類あるようですがこの青花は光が少なくて発色するものだったのです。

ロ) 桃花が桃に、紅が赤く、更紗が更紗らしく

これでやっと寒蘭誌で見るような色に近づけることが出来ました。

写真は後日にしますが、蕾のときから紅 更紗 桃とはっきり区別がつきます。

光をあて温度差をつけてやれば寒蘭の色出しは 暖地でも出来ます。

朝陽に当てたり、夜露にあてたり、鉢を動かす必要はありません。

黄花はまだハッキリしませんが、遅く咲くものは黄色に出ます。早いものは緑がのって最後まで完全には消えません。黄花は今後の課題となりますが以前よりははるかに良い色になりました。 花軸は色の出るもの緑軸のものがはっきりします。

これまでの花が一変します。新花を見るように 現に無銘更紗で初花かと思うものがありました。

ハ) その他の変化

光を多く取り入れたことにより 上からの散乱光が増え真っ直ぐに花軸が伸びる範囲が広がった気がします。ダイオネットをかけていると回りの影響を受けやすい。

蘭花では舌が巻きにくい気がします。この因果関係は解りません。

今まで巻舌だった無銘の蘭(黄花・更紗)で垂舌が出ました。

新芽もなかんずく短い気がします。光線が多いと長い葉が必要ないのかもしれません。

おわりに

 今後の課題は検討中です。画一した寒蘭栽培ができる世になれば幸いです。

 私がここに記したのは一考察に過ぎません。各地、各人それぞれ思い、環境の違いがあります。自分で納得して戴いた上でやってみる価値があるや否や御検討ください。
 色出しができると解ってしまうとこれまでの桃更紗も見る価値があり桃更紗のほうが美しいかなと思ったりもします。先人が言ったように寒蘭は色の多様性をもった宝草です。他の植物には無いとおもいます。美しく、優しい花を咲かせ人に感動を味わってもらえ得れば嬉しく思います。

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             森江 潤二

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蘭舎配地図
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